3 : コルカタ

2010.09.11いざ、インドへ~Day:8 Kolkata~
カテゴリー:3 : コルカタ

時刻は現地時間で、午前1時をまわったところ。

僕は、いやがらせのようにエアコンの効いてるロビーで、パーカーとウィンドブレーカーを着込み、チェーンで荷物を椅子にロックする。

バンコクからコルカタへ行く便は、23:45発ー0:45着のものしかなく、夜の23時を過ぎると、コルカタ市内の安ホテルの玄関は閉まるというので、今夜は仕方なくここ、コルカタ空港のロビーで、インド人達に混じり、夜を明かす。

ロビーの椅子には、ご丁寧にも、一つ一つに金属製の肘掛がついてるので、横にもなれない。


それでも、他の旅行者や現地人は慣れてるのか、みなそれぞれの格好で過ごしている。










 出入り口には、警備の人たちがいて、空港利用者しか入れないようになっているので、知らない街に出るより、よっぽど安全だろう。








ロビーで、荷物に寄りかかりながら、さぁ、ついにやって来たな、と思う。

僕は、ずっとインドに来たがってたワケではない。どちらかというと、潔癖な方だし、インドはむいてない方だと思う。

でも、なんとなく「ここには来なくてはいけない」という感じが、ずっと以前からしていた。

何かの通過儀礼のように、インドに長く滞在しなくてはいけない気がしていて、それが何なのかは、良く分からなかった。

いや、分からなかったから、とりあえず来てみた、というのがきっと正しいのかも知れない。

いつだって、行き当たりばったりだな。

そもそも、インドも見ないで「世界一周しました」なんて言えないような気がする。

もちろん、不安もひとしお。さて、どうなりますやら。


何度かウトウトを繰り返しているうちに、夜が明ける。

さて、そろそろホテルも開いてるだろう、と、ATMでお金をおろし、タクシーで予約したホテルへ向う。

「予約したホテル」ここで、僕の不安と、皆さんの期待は、見事なまでに的中する。ベタ過ぎるほどに。


さて、予約した「Oriental Hotel」に到着。受付には、プリンスオブペルシャに出てくる悪役のような、インド人がいる。

「こんにちは。予約してるんですが」

『なんだって?』

もう、おかしい。普通「予約してる」の後は『お待ちしてました』か『お名前は?』だろ?「たらちねの」と来たら『母』だ。

『なんだって?』って二の句はおかしい。

「予約したんです、昨日」

『お前は、金を払ったのか?』

「払ってませんよ、電話で予約したんだもの」

『金も払わずに、どうやって予約出来るんだ?』

「・・・とにかく予約したんです。電話で、ナガセって名前で」

『どの部屋だ?』

「シングル、エアコン付き、1泊」

『部屋はある』

「見せて下さい」

この時点で、たいぶ、おかしい。が、部屋があるなら良いだろう。細かい事は気にしてられない。だが、僕がHPで見たホテルじゃない可能性も出てきたので、ちゃんと部屋だけは、確認させてもらう。


大丈夫、ちゃんとHPで見た部屋だ。思ったより綺麗。シャワーは相変わらず例のシステムだけど。


「OK、泊まります。いくらです?」

『1泊790ルピー』

「なんだって?僕は電話で700って聞いたぞ?」

『だけど、エアコンつきのシングルは、790だ』

「そんなのは知らない、僕は700って聞いたんだ」


ちなみに1ルピーは約1.8円。なので、90ルピーは、わずか160円ほどなのだが、あの苦労してかけた電話が全部無意味だった感じがして、なんとも、やりきれなかったのだ。

結局、ねぎって750ルピーにしてもらう。やはり悪役は負けるのだ。

とりあえず、部屋に荷物を置き、水を買いに外に出ると、僕は愕然とする。


貴方がもし生活に、清潔と、静けさを求めるなら、この街には来てはいけない。

ひっきりなしに成り続けるクラクション、道に溢れかえる人々、舗装されて無い道路には、タクシー、バイク、リキシャ、ヤギ、その他もろもろ。

非常に失礼な言い方を許して頂けるならば、街の第一印象は、「あんまり文明の匂いがしない」だった。

それもそのはず、僕が降り立った通りは、コルカタの中でも、うるさくて混雑している通り、しかもまだ朝の早い時間だったので、お店は開いてなく、ただ人が溢れている状態だったのだ。

でも、空港で一夜を過ごし、朝一番(その割には日が高く、人が多かったので)という感覚の無い僕は、「こりゃ参った。この街では水も買えないのか?」と非常に焦る。

ホテルで地図をくれと言ったら、そこの壁に貼ってある、といわれたので、地図は持ってない。かろうじて、頭に叩き込んできた地図を頼りに「NewMarket」と書いてあった場所を目指す。

何度も何度も迷ったあげく、やっとそれらしい場所にたどり着く。が、まだ開いてない。今日は休みか?と尋ねると10:30からだ、という。この時点で初めて、僕はまだ朝の9時だという事に気がつく。

すると、後ろから聞き覚えのある「フレンド!」の声が「ヘローフレンド!What do you want? Chai?DarjilingTea?SpicyTea?What do you want?ヘイ、フレンド!」デジャヴュか?いや、違う、むしろ、こっちが本家か。

お店が開いた後、この通りに来てみたら、かなり新しいお店が並んでいて、他の通りに、コンビニのような店も発見。

水もちゃんと入手出来た。良かった良かった。とりあえずは、水だ。

さて、コルカタから次の目的地、ガヤへは鉄道移動なので、切符を予約しなくてはいけない。

インドの鉄道には「外国人専用予約窓口」があるので、そこへ行く。

* これがどのサイトを見ても書いてなかったので、書いておきます。場所の名前は「FairyPlace」イースタン鉄道警備隊事務所の横、にあります。

ここで、コルカタ中心部の北側を見て、驚く。なんだ、コルカタ都会じゃないか、と。


 














 


 



 






 ←何かのモスクだと思うでしょ?コルカタ中央郵便局です。








 iPhoneで写真を撮ってたら、珍しそうに覗きこんでたので、撮ってあげた→

 撮ったのを見せたら、一言「Good」と笑った










切符の予約を済ますと、時刻は15時過ぎ。ここまで、まだこの街では食事をしてない。さすがに、「インドでは皆がお腹を壊す」と脅されてるので、慎重になりすぎて、何も食べれてない僕。

でも、さすがにチャイぐらいなら、となるべくグツグツ煮立っているものを選んで、1杯飲む。









ここでも、また街を歩き続ける。でも、さすがに1時間ほど。



夜は、香港で大変親切にしてくれたアショクの友達に会いに行く。

なんと、ここコルカタは、アショクの生まれた街だという。そういや、アショクって名前は広東人じゃないものね。

友人の名前はロイ・アンブラシュ、なんとも穏やかなインド人。きっと育ちが良いのでしょう、一口にインド人と言っても色々です。

夕食をご馳走になるのだけれども、なるべく生ものを避けるとなると、頂ける食事はかなり限られる。

サモサというジャガイモや豆を、小麦粉の皮で包んであげたモノと、カレーのスープ、魚のフライ、ベビーコーンのフライ、マトンのカレー。

ま、少しずつ様子を見て、慣らしていけば、とまだまだ慎重な僕。

食事の場に小さな女の子がいたので、持ってきた折り紙で、鶴を折ってあげると、たいそう喜ばれた。鶴そのものよりも、僕が紙を折っている工程が面白いらしく、周りの人が集まって来た。こりゃ、なかなかウケるのかも。


夜のコルカタも、相変わらず騒がしい。でも、もうすでに慣れてしまった感もある。

良かった、なんとかインドでもやって行けそうだ。


ところが、どっこい。インドはそんなに甘くない。


2010.09.11インドでダウン~Day:9 Kolkata→Gaya~
カテゴリー:3 : コルカタ

我ながらベタだな、と思うが、現実とは思いの他、ベタなものなのかも知れない。

インドの洗礼は、なんと二日目にやってきた。


夜中に、強烈な腰の痛みと、胸のムカつきで目を覚ます。

やはり、空港ロビーの硬い椅子で、一晩あかし、そのまま街を歩き回ったのが、良くなかったのか。

あるいは、タイのマッサージで一部分だけ、一部分だけ楽になったのが、かえって良くなかったのか。かなりの痛みを、腰に感じる。

そして、鉛を飲んだかのような、胸のムカつき。

空腹に揚げ物ばかり食べたのが、いけなかったのか?油が合わないのか?着いて初日で?

とりあえず、母が持たせてくれた胃薬を飲む。

しかし、いかんともしがたい腰の痛み。背中が張って、胃を圧迫して、と悪循環しているのか、思わず、どちらかにしてくれ、と言いたくなる。

この時はまだ「やれやれ、困ったな」程度で再び眠る。

が、翌朝。

胃薬が効いたのか、胸のムカつきは、だいぶ収まっている。が、腰の痛みはますます酷くなっている。これでは、15kgのバックパックを背負って、400km先の街には、行けそうにもない。

だけど、予約の変更キャンセルの手間を考えると、鉄道に乗った方が楽な気がする。

仕方なしに、少しでも腰痛が治まればと、全身のストレッチを始める。が全然、身体が言う事をきかない。酷く身体が重い。

この時にやっと、自分が体調を崩している事に気づく。

でも、別に熱があるわけでもなく、下痢や吐き気があるわけでもない、ただただ身体が重い。

本当は朝の内に、ネットカフェを探して、ガヤの情報を調べたかったのだが、とてもそんな状態じゃない。

でも、なんとか仕度をして、11:45発の電車に乗ってしまえば、寝ているだけで、21:45にはガヤに着くのだ。着いたら、高くても良いから、綺麗なホテルで寝れば良い。そうすれば、これくらい、すぐに治るだろう。

よし、出かけよう。

ホテルの目の前にいたタクシーを捕まえ、コルカタ駅に向って貰う。

時刻は、午前10時過ぎ。道も込む時間帯なのか、揺れるばかりで遅々として進まない。相変わらずの、クラクションと人と車とリキシャの洪水。当然気温は30度を超えている。

この時僕は、自分の体調が思っているより悪い事に気づく。

今となっては、ほとんど覚えて無いけど、汗がひっきりなしにあふれ出て、起きているのか寝ているのか分からないような感覚だった。

と、30分ほど揺られた頃、とうとう限界を迎え、タクシー後部座席で戻してしまう。

用意周到な僕は、ちゃんと持っていたスーパーのビニール袋に致す。これが見事なまでに胃液しか出ない。食あたり?これ?

でも、さすがに、運転手に気づかれずにこっそりと、というワケにはいかない。

これは参った「何やってんだ!ふざけるな!100ルピー余分に払って貰うぞ」くらいの事は覚悟したが、運転手は一瞥をくれただけで、何も言わない。

途中のゴミ捨て場のような所で「ここで、それ捨てな」と手で合図しただけで、降りる時に余分な請求をされる事も無かった。

色々な意味で、無頓着なインド人。悪い事もあれば、良い事もある。 もちろんある。

予定の倍ほどの時間はかかったが、なんとかコルカタ駅に到着。悪いものを出してしまったのか、随分身体は楽になっていた。

だが、やっぱり相変わらず腰は痛く、荷物を持って電車のホームを探すのは、かなり大変だ。

ネットでちらっと見た、ポーターという荷物運び屋さんを雇って、乗るべき列車を教えて貰いたかったのだが、駅は人で溢れ、どの人がポーターだか分からない。仕方ない、自分で探そう。

昔、ハウス名作劇場の「七つの海のティコ」で言ってた。

「どこの国に時間通りにやってくる列車があるんだ?」

そう、みんな言う。そんな国は日本だけ。11:45発のインドの電車がちゃんと来るとは限らない。しかも予告もなしに、発着ホームが変わるらしい。

こんなヘロヘロの身体で、駆け込み乗車や、乗り損ねはゴメンだ。何度も何度も、色々な人に聞いて、ホームを確認する。

11:15にそれらしい電車が来る。まさか、まだ30分前だぞ?鉄道警備の人に確認すると、これだ、という。ホントに?

けど、それ以上確認するだけの気力がない。もういいや、乗ってしまえ。

乗ったのはエアコン付きの、2等寝台。2段ベッドの寝台が一つ、というだけのもの。でも、横になると177cmの僕でも足が出る。

こうなると、ケチって3等にしなくて本当に良かったと思う。荷物を端に寄せ、とにかく横になる。水だけは、小まめに飲む。

なんとか大丈夫そうだ。

ほっと一安心して、ウトウトしていると、電車が動き出した。時計を見ると、11:45。

本当に?ここはインドだぞ?

これが、どれくらいの確立で起こることなのか、僕には分からないけど、今の僕にはありがたい事この上ない。

ウトウトしながら僕は、自分が小さい頃から憧れてた寝台特急に乗っている事に始めて気づき、ちょっと笑う。


この電車に乗っている間の約10時間、ほとんど眠り続けた。もちろんグッスリとは行かず、他の乗客や物売りの声で1、2時間に一度は起きてしまうが、何もせず、ただひたすら眠り続けた。相変わらず腰は痛いけど、体調は少しずつ良くなっているような気がする。

でも、さすがに食欲は無い。コルカタで買った、フルーツジュースを飲む。これがあって良かった。

結局、この列車は定刻通り21:25にガヤに着いた。定刻発、定刻着。

雪の日に小田急線が、通常運行してるくらいありえないんじゃないのか?


すっかり日の暮れているガヤ駅構内は、もの凄い事になっている。

待合室らしき所には、老若男女、犬、牛、ヤギ、全てが、ごちゃまぜになって寝ている。何かを待っているのか、ここで生活しているのか、ただいるだけなのか、一目見ただけでは分からない。ただ、ただ凄い光景である。

とてもじゃないけど、写真を撮る気力は無かった。ごめんなさい。


大分体調は良くなったものの、今欲しいのは、ただただ綺麗なベッドだけだ。駅構内のツーリストインフォメーションに行き、地図をくれというと、地図なんか、無いという。では、ホテルリストは?そんなの無い。じゃ、ここは何のインフォメーションがあるんだ?

とりあえず、ホテルはどこだ?というと、あっちだ、と指を指す。ホント、やれやれだ。

駅構内を一歩出ると、オートリキシャと呼ばれる、3輪タクシーが群がってくる。皆乗ってけ、と言ってるんだろうけど、皆何を言ってるのか、さっぱり分からない。しかも、僕の姿を見つけると、車に乗ったまま寄って来るので、うまく避けないと車に挟まれる。

とりあえず、駅周辺に中級、高級ホテルは無い、残念ながら。今なら1万円払ってでも、綺麗なホテルに泊まってやるのに、と思いつつも、もう、どこでも良いという気もしてくる。

何件か回るが、どこも似たり寄ったりだ。

数件目の「ホテル ブッダ」(ネーミングに遠慮がない)比較的綺麗か、と思いきや、汚い事この上なく、しかも750ルピーと法外な値段。明らかにボっている。そして、ロビーの壁には、僕の靴くらいのサイズはあろうかという、大きな黄色いトカゲが、我が物顔ではっている。

結局、数件目の250ルピー(約450円)のホテルに泊まる。名前も覚えてない。夢に見た真っ白なシーツではない。シャワーはおろか、高い位置にあるパイプから、水が出るだけ。当然、エアコンなんて無い。でも、とりあえず、具合だけはマシになっているようなので、それだけは、本当に安心。

部屋を閉め切った後、10匹以上の蚊をやっつけるが、良く見ると部屋の上部が完全に開いており、出入り自由、途中で諦める。

コルカタで買ったオレンジを食べ、ナイフで小さく切った皮を、ベッドの周りにぐるっと並べてみる。柑橘系の皮は、蚊を寄せ付けないという、どっかで仕入れた、豆知識。まさかこんな所で、使うとはなぁ。

昼間、あれだけ列車で寝たにも関わらず、まだ眠れそうだ。

ホテルブッダで見た、黄色い大きなトカゲの姿が頭から離れないので、電気は付けっ放しで寝る。暗闇では、動物に勝てそうにも無いものね。


が、寝てる途中で、何度も停電し、その度に誰かが怒鳴り、発電機のエンジンを回すけたたましい音が鳴り響いて、また電気がつく、の繰り返し。

もう、たいていの事では驚かなくなっている。 自分の体調が回復しつつあるのが、喜ばしかった。



せめて、これが成長でありますように。


*ネット環境の都合上、今日はこれくらしか更新出来ませんが、結果、僕は今、すっかり元気です。夢に見た、真っ白なシーツで寝て、ご飯もちゃんと食べれてます。もし、ご心配されている優しい方がいらっしゃいましたら、ご安心を。

 どのように元気になったのかは「流暢に関西弁を喋るインド人」が関係してきます。

 次回「阿佐ヶ谷、世田谷、ブッダガヤ」をご期待下さい。