13 : ウィーン

2010.10.18ウィーンの丘の猿たち~Day:40 Vienna~
カテゴリー:13 : ウィーン

ミラノ発ウィーン行きの列車も、ちゃんと定刻通り、21:05にミラノ中央駅を発車した。

なんだ、ヨーロッパの列車もちゃんと定刻通りじゃないか。そんなに頻繁に遅れるものじゃないのかな?

 

 とても陽気な車掌さんが、チケットとパスポートを回収に来る。

 この方はあまり英語を話す方ではなかったけど、いくつかの単語と、例によってジェスチャーと表情で、全て理解出来る。

「これは一度僕が預かる。明日の朝、オーストリアの警官のチェックがあった後、僕が、またこの客室に来て、それぞれに返す。OK?」

OKです。ここで、以前なら、また荷物検査だのパスポートコントロールはどこだの心配する所だったが、僕のブログを見てくれている方が、親切にもツイッターで教えてくれた。シェンゲン圏内であれば、国境を越える場合でも、国境検査は受けなくて良い。

僕はそんな事も知らなかった。お恥ずかしい。

それでも、イタリア人であっても、オーストリア人であっても、パスポートは携帯しなくてはいけないようだけど。

ツイッター、フェイスブック、mixi等、色々な物があるけど、本当に使い方によっては、なんとも便利なものだな、と思う。

 

 4人客室の中で、僕の向かいのベッドの青年が、唯一英語を話す人だったので、列車の経由等、色々と教えてくれた。

 歳は、20代前半くらいだろうか。

 列車に乗り込む際に、家族と長い事、ホームで話しをしていた。

 荷物は、それほど大きくないけど、長いお別れなんだろうか。少し年配のご夫婦、若い女性一人と、いつまでもホームで別れを惜しんでいた。

 車内のベッドに腰掛けていた僕は、それを見て何かを思う。

でも、どうにも何と言ったらいいか分からない。なんとも言えない寂しさのようなものを感じていた。

なんでかは、本当に分からないけど。

 

 朝、パスポートを返却に来た車掌に起こされる。

デッキに出ると、ものすごく寒い。おそらく、気温は3、4度だろう。

窓から外を見ると、映画のセットみたいな景色だった。

まるでシルバニアファミリーのお家みたいな、建物ばかりがずーっと並んでいる。

線路沿いなのに、看板もいっさいない。時折ある道路標識がかろうじて、現代なのを教えてくれるが、それが無ければ
タイムスリップしたかのような光景だった。

そして、一面に霜が降りている。

 これはさすがに山の中だから、なんだろうけど、考えたらどんどん北上して来て、とっくに北海道より北に来ている。

そろそろ良い加減、着るものをなんとかしなくては、いけないかも知れない。

 

 ただ、予定ではヨーロッパを周った後、エジプト、ケニア、ヨハネスブルグと行く予定なので、出来ればコートは買いたく無い。

でも、ウィーンの後は、プラハだから、さらに北上する事になる。まぁ、着いてから考えよう。

 

 着いた。

 案の定ミラノより寒い。気温はたぶん、2、3度しか変わらないのだろうけど、空気がとても乾燥していて、本格的な冬を感じさせる。

ウィーン中心地のユースホステルは満室だったので、少し西に離れた所にある、デュッセルドルフという所に宿を取る。

丘の上の教会の、目の前にある、静かな場所だった。

  

 

 

 

 

 

 

部屋に入れるのは15時からなので、荷物を預かって貰い、ウィーンの中心地に行く。

 まずは、ウィーン国立歌劇場。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1869年5月25日に、モーツァルトが「ドン・ジョパンニ」でこけら落としを行った、伝統ある劇場。

その後、一度戦火で焼け落ちているのが、残念でならない。

モーツァルトの指揮したオペラの音が沁み込んでいる壁の劇場。いったいどんな音の響きだったんだろう。

  

幸いにも快晴だったので、晴れているうちに、とアチコチの写真を撮っておく。(だんだん番組の収録みたいになってきた)

 ウィーンの中心地には、数多くの観光スポットがあって、ちょっとビックリする。

路面電車に乗って街を周ると、一駅ごとにすごい建物が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはなんだろうと思って、中に入ったら、なんと国会だった。

この豪華さには驚いたたけど、いとも簡単に中に入れる事にもっと驚く。

 

 ウィーンは色々な作曲家の足跡があるけど、僕が一番好きなのはこの人。

 

 この像のポーズを考案した人に拍手を送りたい。やっぱりこれくらいじゃないと、つまらない。

モーツァルトが、本当にこんなイメージの人だったかどうかは、分からないけど。

 

 





歩き回ったらお腹が減った。

ウィーンは日本食がブームなのか、いたる所に「Sushi」の看板を見つける。


だいたいは、中国人がやっている中華料理屋に、海苔巻きとか、マグロ(に見える)やサーモンの握りが置いてあるお店ばかりだ。

中にはこんなのも。

あきらかに日本人はひとりもいないだろうタイ料理屋。よくもまぁ、堂々とこんな店名を。






なんでかは分からないけど、どのお店も良く賑わっている。スタンド型のお店もよく並んで、みんな器用にお箸を使って、中華風焼きそばや、握りずしを食べてたりする。

ちょっと食べてみたかったけど、一人前の折り詰め(きゅうり、お新香、にんじん(?)の巻物と、マグロ、サーモンの握り)で、8ユーロ(約900)くらいする。たぶん、いや、絶対満足しないからやめておこう。

と、こちらへ。



みんな、なんとも美味しそうに、ビールを呑みながら食べてる。僕も、ホットドッグにして貰って食べた。

でも、せめてレタスの一枚くらい欲しい。まぁ、おつまみ感覚なのかな。

これで、4ユーロくらい。(確か)






日が暮れてからはさすがに寒いので、早めに宿に戻る。

と、この静かな丘の上に建つ宿が、大騒ぎになってる。

なんと、中学生くらいの団体がやって来ていて、宿中大暴れしている。

40人以上はいるだろうか? はっきり言って、酷い。

動物園の猿の檻に入れられても、もう少しマシなんじゃないだろうか?

騒ぐ、走る、唄う、飛ぶ。勘弁して欲しい。

僕がロビーで、ネットに繋いでると、周りを囲んでドイツ語で、ギャーギャー騒ぐし、深夜になっても寄生を発しながら、すごい音で飛び跳ねてる。

先生は勿論いるのだが、ほとんど、何も言わない。 完全野放しだ。 猿の放し飼いだ。 

頼むから貸し切ってくれよ、と思うんだけど。予算くらいあるでしょうが。


まぁ、僕はと言えば、早々に諦めて、耳栓をして寝る。

もう、たいていの事では、僕の眠りは妨げられない。


勿論、静かな方が良いんだけど。


2010.10.20白い恋人達~Day:41 Vienna~
カテゴリー:13 : ウィーン

朝起きると、頭の中に何かのメロディーが残っていた。

 まるで、ついさっきまで聴いていたかのように、はっきりと残っている。

試しに唄ってみると、桑田佳祐さんの「白い恋人達」だった。

僕はこの曲のCDも持ってないし、特別聴いた事がある曲でもないのに、起きる直前まで、はっきりと頭の中を流れていたようだ。

 おそらく、この街の乾燥した冬の雰囲気が、僕の中でこの曲を連想させて夢に見るかなんかしたんだろう。

まさか誰かが耳元で曲をかけてた、って事はないだろうから。

僕のiPhoneは日本を出て3日目、に全てのデータが飛んでしまったので、かれこれ1ヶ月以上、日本の曲は聴いてない。

それなのに、勝手にイメージと結びつけて、ちゃんと聴いた事の無い曲を流すとは、人間の脳って本当に不思議だ。

おかげでウィーンにいた間中、この曲を鼻歌で唄ってた。 すごく適当な歌詞をつけて。

 

 と、まぁ完全に冬を連想するくらい、ウィーンは寒い。でも、コートを持ってない僕を哀れんだ神様が、この日も快晴にしてくれた。

 

 遅れているブログを、なんとか書き、今後の旅程を検討する。

 とりあえずは、ウィーン、チェコ、ドイツ、オランダ、パリ、スペイン、くらいのつもりでいるのだが、スペインからエジプトへの
経路が全然見つかってない。モロッコから、陸路にするか、いっその事バルセロナから飛行機に乗るか。

そして、ナイロビ、ヨハネスブルグで、、現地ツアーをお願いする旅行会社とのやりとりも進めなくてはならない。これが、メールで見積もりをお願いしても、返事が無かったり、予算が合わなかったり、なかなかうまくいかない。

このユースホステルは、ネットの回線が早くて、とても助かるのだけど、ずっとロビーでPCをいじってると、昼食を取りに戻って来た、元気の良いお子様達の集団に襲われる。 この宿に泊まってらっしゃる団体さんだ。

オーストリアで、猿の群れに囲まれながら、ケニアのサファリツアーを考える。

もう、なんだか分からない。

ドイツ語が出来たらなー、こいつらに日本の嘘文化を教えまくってあげるのになー、実に残念だ。

 

なんだかんだやっているうちに15時を過ぎてしまった。慌てて、国立歌劇場、に行く。

この日の演目は「IL BARBIERE DI SIBIGLIA」。この「BARBIERE」が「barber」なのかな?だとすると「DI」がきっと「of」とかそんな感じだろう、という事は「SIVIGLIAの床屋」だ。 お、「セビリアの理髪師」か?!

と思ったら正解でした。やっと僕でも知ってる演目だ。確か、フィガロの結婚を含めた3部作で・・・セビリアの床屋さんの話だ。

 当日券の売ってる窓口はネットに載っていたんだけど、何時からかが分からない。とりあえず、17時過ぎに行ってみると、もう結構な行列が出来ていた。

 

* ここでも、せっかくなので当日券の取り方を書いておきます。

まず、劇場正面向って左側にスタンディングシートのチケットオフィスがあります。

 

 

 

 

 

 

 

ここのドアは、開演の3時間前に開きます。(人気の演目の場合、早朝から整理券を配る事もあるそうです)

並ぶ場所は室内で、トイレもあるので比較的並びやすいですね。

ここにずっと並んでいると、開演1時間半ほど前にチケットオフィスが開きます。チケットは一階席の後方の「Parterrestehplatz」、バルコニー席の後方の「Balkonsstehplatz」、最上階の後方、いわゆるギャラリー席の「Galeriestehplatz」の3種類ありました。

値段はなんと、Parterrestehplartz席だけ4ユーロ、あとの2席は3ユーロ。

他にも劇場内に、普通の席用の窓口があります。(おそらく開場と同時に開くかと)座席の種類の横に残席数が表示されており、「AUS」となっているのは、どうやら「売り切れ」のようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタンディングシートを買ったら、そのまま劇場内に入り、それぞれの場所の手前で、また並びます。というのは座席指定ではないので、良い場所は早いもの順なんですね。

客席係りがOKを出したら、客席内に入り、好きな場所を取ります。そして、自分の場所にスカーフやマフラーを巻きつけて場所取り完了です。

後は、開演まで外に出ても大丈夫。ただし、チケットをお忘れなく。

* あくまでも、2010年10月のこの日はこれで取れたという事なので、ご購入の際は確認して下さいね。

 

僕は、席の種類が良く分からなかったので、とりあえずギャラリー席へ。と、ほとんどの人は一階席に流れたせいか、ギャラリーの一番前の席を取る事が出来た。

舞台の全部が見える・・・これで、3ユーロ。本当、感激です。日本の劇場もこうならないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 



最上階の後方に位置するギャラリー席だけど、スカラ座より劇場が小さいので、全然舞台が遠くない。

スカラ座のギャラリー席は、この劇場で言うと、この劇場の天井付近から舞台を観ていた事になる。それでもあれだけ感動させるんだから本当に凄いよな、と思う。


簡単に、観劇レポートを書くと、そんなに良く無かった。

まぁ、お話しと演出は、置いておいて、どうにもこうにもフィガロ役の役者さんが、好きじゃない。ケレンミたっぷりで、なんというか、人を笑わせるセンスに欠けている気がする(お、偉そうに)。

でも、バルトロ役の方は素晴らしく、ここぞという所では、見事に劇場中を笑いに包む。

いかにもベテランの芝居、という感じがした。

そして一番残念な事に、主役のテノール、ソプラノ方に、どうにも感動出来なかった。。

僕ごときがこんな事言って、本当に失礼だとは思うけど、僕は「どうですか?上手いでしょ?!」というように朗々と歌い上げられるのが、どうも好きじゃないのです。

なんというか「聴くことを強制される」という感じがして、どうしても苦い顔をしてしまう。

その点、スカラ座で観た、フランチェスコ・デムーロさんは、聴衆に聴くことを一切強制しない、本当の独り言のような歌声だった。前半の、小さな小さなつぶやきのような歌声は、それでもあの広いスカラ座全席に完全に行き渡り、強烈に観客の心を打っていた。

自分のソロが終わって、観客の拍手が1分近く鳴り止まなくても、そんなのは一切聞こえてないかのように、ずっとそこにたたずんでいた。

今回のテノール、ソプラノの二人は、技術は大変素晴らしいのだろうけど、ちょっと押し付けがましいように聴こえる。

あくまでも個人的な感想で、他のお客さんは喜んでいらしたようですが、僕は少し残念でした。

あと、海外のこういう喜劇で、笑いを取るシーンを観ると、良く思うのだけど、日本のお笑いは、やっぱり相当凄いレベルなんだな、と思う。

もちろん、ただナンセンスな「一発ギャグ」系も多くあるけど、絶妙の間や、高い演技力で笑いを取る芸人さんの技術は、世界トップレベルなんじゃないかな?と思う。特に最近の若手のお笑いの方の、ショートコント系の方は本当に勉強になる。彼らのあの技術を、言葉の壁を越えて、世界に出せれば、漫画、アニメに続く、海外輸出文化になると思うんだけどな。

観劇レポートじゃなくなっちゃった。まぁ、いいや。


なんだか、文句ばっかり言ってるけど、たった3ユーロで、この高い技術の集まった芸術を3時間も堪能するなんて、本当に贅沢な話です。

ありがとうございました。


やっぱり、日が暮れた後は、ウィーンの方が格段に寒い。

同じ温度の寒さでも、身体の中への浸透力が違う気がする。やっぱり北に来たんだな。

適当な歌詞で「白い恋人達」を歌いながら、宿へと続く坂道を登る。


暖かい宿に着いて、ほっとした瞬間、また猿達のとんでもない奇声が聞こえて来た。

これほど押し付けがましい声も、他に無い。


2010.10.20オニーギン再び~Day:42 Vienna~
カテゴリー:13 : ウィーン

またもや、朝から、ブログと旅程に、頭を悩ませる。

 少しでも長く、ヨーロッパにいたいので、バルセロナから飛行機で一気に、カイロに行ってしまおう、と思ったのだが、どうにも
安い航空券が見つからない。一番安くても280ユーロ(約32000円)くらいはしてしまう。

 こんな事なら、バルセロナ、カイロ間のルートも世界一周航空券に組み込んでしまえば良かったな、と思い、ふと気づく。
今から、経路変更で組み込んでしまえばいいのだ。

 

 僕が使っている世界一周航空券は、スターアライアンスのもので、29000マイル内で、16フライト以内であれば、好きに
ルートを組める、というもの。同じ国での途中降機は何回までとか、来たルートは戻れないとか、色々あるのだけど、僕のルートで約38万円くらいだ。

 日時変更は無料だけど、経路変更は確か120ドルくらいかかる。それでも280ユーロよりは安いので、そうしてしまおう。

 こんな簡単な事、なんで気づかなかったんだろう、とスターアライアンスのHPでの経路マイル計算ソフトを使って、バルセロナ→カイロを組み込むと、2000マイルほどオーバーする。それでは、29000マイルの航空券では無くなってしまうので、駄目だ。

んー困った。

では、ローマくらいから乗れば・・・と計算し直すも、まだ超える。ぢゃ、もうギリシャから乗ろう!としても800マイルほど超える。どうにもこうにも、29000マイル内、というルールに収まらない。

 では、しょうがない、カイロを飛ばして、バルセロナ→ナイロビにするか、としてもやっぱり超える。ではいっその事、ツアーの料金も浮くし、ナイロビかヨハネスブルクのどちらか1都市にするか、と、バルセロナ→南アフリカを検索するも、そんな便なんてあるワケない。どうしたって、カイロ→ナイロビ経由だ。では、ナイロビだけにするか、となると今度は、ナイロビから、次のニューヨークへの直行便がない。

  

いっその事、アフリカを諦めようかな、という気になってくる。

 どうしても行きたかったアフリカなのだけど、調べれば調べるほど、ちゃんと、じっくり行ってみたくなる。

 ただのサファリツアーだけでなく、各村へのホームステイや、民族楽器の講習会なんてのも受けたい。

とすると、どうしてもお金はかかるし、時間もかかる。でも、ヨーロッパはもっともっと見たい。どっちつかずこの上ない。

 でも、アフリカに行かない、というのは、どうにも嫌だ。何か良い方法はないものか。

 

 と、考えをめぐらせている間にも、毎度おなじみ「ウィーン猿軍団」がやって来て、僕の周りで20重奏くらいを奏でてくれる。コーラスじゃない。ユニゾンじゃないから。各楽器、各パートの主張が激しすぎる。どんなマエストロも、彼らを御する事は出来まい。

なんで、こいつらは夕べあんなに遅くまで騒いでたのに、朝も昼もこんなに元気なんだ?まったく。そのパワーを生産的行為に役立ててくれ。

 

 お昼もだいぶ過ぎたので、外に出る。

 今日の国立歌劇場は、お待ちかねのバレエだ。

演目は「オニーギン」。 


お?おにーぎん??はて、どこかで観たような。

なんでしょう?流行ってるんですかね?それとも10月はオニーギンの季節なんでしょうか?

結構、マニアックな作品を2連続で観るとは。

まぁ、数日と空けずにミラノ、ウィーンで観比べるとは、なんとも贅沢な話なので、いいか。

バレエは、さすがに近くで観たいので、今日は1階席を狙って早めに行こう。


その前に、今月は僕の兄の誕生日なので、プレゼントを買いに行く。

「何が欲しい?」と聞いたら「ウィーン楽友教会の2011年版のカレンダー」と答える兄。

僕は2人兄弟なのだが、兄とは6歳離れているので、ものすごく兄の影響を受けて育った。

兄は小さい頃から、山のように本を読んでたし(おかげで僕は、読む本に苦労しなかった)、クラッシックのレコードも沢山持ってたし、グレングールドを教えてくれたのも兄だった。

僕が役者を目指すと言ったら「なら、こういうのも観なくちゃ駄目だろう」とオペラ「ドン・ジョバンニ」のS席のチケットを誕生日にくれた。(そういやあれはプラハのカンパニーじゃなかったかな?)


なので、22ユーロのカレンダーなんてお安い御用だ。楽友教会へ向う。


ウィーンの街は、とても綺麗で、建物は素晴らしいんだけど、道幅のせいか、どうにも閉塞感というか、威圧感を感じる。

なんとも「キチンとしなさい!」と、街や建物達に言われている気がしてしまう。ちゃらんぽらんな僕の被害妄想だとは思うけど。

楽友教会の窓口の方は、とても上品な物腰で、まるで何かの所作のように奥からカレンダー出して来て、僕に売ってくれた。

さすが、ウィーン楽友教会。恐れ入ります。


今日は20時開演なので、17時に立見席用の窓口に向う。あんまり人気がないのか、17時に行ったら3人しかいなかった。

通路に座り、ノートPCを取り出し、ブログを書く。なんだが、だんだん仕事みたいな気がしてきたけど、ありがたい事に、こんな日記でも、わざわざ劇団の先輩や、同期が「○○の回、読んだよ!」なんてメールを送って来てくれたり、コメントを書き込んでくれる方がいたりするので、なんとか頑張って書く。

これも何かの役に立つと良いのだけど。


ブログも書け、席も無事に確保する。

ここは、撮影OKなので、写真でご報告すると、なんとこんなに舞台に近い。


写真で伝わるでしょうか?大きめの映画館の、一番後方の席より舞台に近いです。(分かりにくい例えだ)

立ち見とはいえ、相当に良い席だ。昨日のギャラリー席もビックリしたけど、これで4ユーロ(約460円)とは本当に恐れ入る。


度々、恐れ入った後で、またこんな事を書くのが非常に恐縮なのですが、このオニーギンはあまり良くなかったです。

まぁスカラ座のが、最高に素晴らしかった、というのもあるのだろうけど、やはり表現力というのは、とても重要なのだな、と思い知りました。

技術でいえば、本当に本当に素晴らしいです。へなちょことはいえ、少しはバレエをやっていたので、どれだけ難しい事をやってのけているのかというのは、充分に分かります。だけど、やっぱり「高い技術力」というのは「すごい!」という感想しか生まず、「感動」というのは、人の心が、人の心を打つ、という事だと思うのです。「高い技術」を「伝達手段」として用いて。

なので、技術が高くないと、伝達そのものが出来ないわけで、伝達出来たとしても、中身がないと意味がない、高度な技術で水道管をひいても、充分な貯水量がないと、各家庭の蛇口を捻っても水は出てこないのであります。


まぁ、毎回「僕ごときが」というお断りを入れるのも、何なので、生意気ついでに色々書いてしまおう。

細かい点では、本当に「キチンとして」いて、コールドバレエなんてピタっと揃っていて実に素晴らしかった。

スカラ座のコールドなんてバラバラで、ジャンプのタイミングが思いっきりズレたり、袖にはける前に気を抜いたり、結構いい加減だった。

ただ、それを補ってあまりあるほど、タチアーナ、オニーギン、レンスキーの3人が素晴らし過ぎた。

オニーギンは、本当に粋な2枚目で(すごく遠くからでも分かる)、レンスキーも難しい立場を見事に演じていた。

そしてタチアーナが、本当に、最高に素晴らしかった。特に、愛するオニーギンへの手紙を書くシーン、とクライマックスのシーンは最高に感動した。

「良く観ろ!!表現力とは、こういう力の事を言うのだ!」と伝統あるスカラ座に、言われてるかのようだった。


その点、今回のカンパニーは(比べるというのは、ある意味とても失礼だと思うのだけど)オニーギンが、どうにも格好良くない。

たぶん、衣装のせいもあるんだろうけど、ちょっと野暮ったすぎる。

やっぱりこのお話しはオニーギンが素敵で、粋じゃないと、ただの勘違いの酷い奴になってしまうので、ちょっと残念だ。

そして、レンスキー、オリガと存在感があまり無い。まぁこういう役は、とても難しいのだとは思うけど。

タチアーナは、技術は大変素晴らしいのだけど、残念ながら感動はしなかった。なんとも勿体無いな、と思ってしまった。

この演目のなんとも特徴のある振りをやるには、どうしても蛇口から溢れるくらいの表現がないと、ちょっと滑稽に観えてしまう時があるので、

やっぱり内面ありき、なのだな、と痛感してしまいました。


4ユーロの客にここまで言われるなんて、役者って職業は、本当に大変だ。

かわいそうに。


あーでもない、こうでもない、と考えながら、地下鉄に乗り、猿山に戻る。

この猿達の中からも、役者になろう、なんて奴がひとりくらいは出てくるんだろうな。

よし、4ユーロで酷評してやろう。


宿からの景色