17 : ベルヘン・オプ・ズーム

2010.11.13It’s your decision.~Day:56 Bergen op Zoom~
カテゴリー:17 : ベルヘン・オプ・ズーム

お世話になった、Therrien夫妻に別れをつげ、僕はまたクソ重たいバックパックを背負い、西に向う。

 列車を乗り継ぎ、ドイツを抜け、ヨーロッパの西の端、オランダに入る。

 南から入ったヨーロッパも、ベルリンを頂点として、西の端まで渡って来た。

今後は、このまま南下し、オランダ、ベルギー、フランス、スイス、スペインと行く予定だ。

後は、ヨーロッパで、約1ヶ月、アメリカで約20日、それで僕の旅は終わりを迎える。

残りはあと半分以下だと思うと、少し寂しいような、ほっとするような。

 

 ボーフムから、2回乗り替え、オランダのアムステルダムに到着、するもさらに乗り継ぎ、南へと向う。

 今日の目的地は、アムステルダムから南へ数十キロ行った地点にある「ベルヘン・オプ・ズーム」という街だ。

 ボーフムに続き、またもやマイナーな街(失礼)に行くという事は、そう、またもや友人宅にお世話になるのだ。

 ご迷惑ばかりおかけして、本当すいません。

 

 ちょうど、今年の3月、僕が世界一周旅行を本格的に計画しだした頃に、東京でオランダ人の青年と知り合った。

 「オランダから来てるんですか。僕は今年の後半に世界を旅するから、オランダに行った時は、ぜひ会いに行きますよ」なんて言ってたのが、本当になってしまった。

 その後、夏頃にもう一度、彼は日本に来たのだが、その時、僕らは会えずじまい。

 以後フェイスブック等で、連絡を取り合って、なんとなく仲良くなってしまった。

 なんとなく仲良くなった日本人を、なんとなくした会話で、本当に泊めてくれる。その、なんとも義理人情に厚いオランダ人、彼の名前は「Ruben van Rompaey」。

 「Ruben」とは長男に付けられる「一郎」的な名前で、カタカナ表記すると「ルーベン・ファン・ロンパエィ」なのかな。

今回もまた、挨拶程度はオランダ語で、と勉強したところ、オランダの発音は実に難しいのです。

この「ルーベン」のRも巻き舌風だし、「こんにちわ」の「Goedemiddag」なんて、最初は全然発音出来なかった。

どうやら、「G」は咽喉の奥に勢い良く息が流れるような(まるで痰を切る時のような)音で発音するらしく、街の名前の「ベルヘン(Bergen)」も無理やり文字にすると、「ベル(カハ)ン」と聞こえる。

これを「ヘッ」とか「ハッ」とか発音するとまるで通じない。「はじめまして」の「Aangename kennismaking」なんて、ルーベンの家族全員に「??」という顔をされ、3、4回目にやっと分かって貰えるくらいだった。

チェコ語も難しかったけど、オランダ語は今までチャレンジした中でも、トップクラスに難しい。

 

 彼の家は、駅から歩いて10分ほどの一軒家。これがとてもとても、可愛らしいお家で、思わず何枚も写真を撮ってしまった。

  

急角度の屋根を見て「この辺りは沢山雪が降るんでしょ?」と聞いたら「良く分かったね」と言われた。「日本の北の方にもこんな屋根があるからね」

 ルーベンは実家住まいで、お母さんが出迎えてくれた。外見からは小さく見えるこの家も、実は3階建てで、中はとても広く、中庭とガレージまであった。

 

 

 

ガレージの一画にルーベンの練習部屋がある。

そう、彼の職業はパーカッショニストなのだ。12歳の頃からドラムを始め、今では「ダルブカ」というトルコの打楽器奏者として活動している。彼が演奏している所は、FaceBookで何度か観ただけなので、せっかくなので演奏して貰った。

 プロなんだから当たり前だけど、これが上手い上手い。

携帯の方は見れないかも知れませんが、動画を。


 


動画だとほとんど捕らえきれてませんが、メインで使っているのは薬指で、サブで人差し指、ほとんどの音がこの2指で鳴らしているのです。途中の連打部分なんか、ものすごい速さで、この2指を動かしているんですね。


僕は全然知らなかったけど、彼は何枚もCDを出していて、彼の書いた「ダルブカ教本」もVol.3まであり(日本語版もある!)日本でも何度もコンサートをやっているのだとか。

そして、mixiには彼のコミュニティまである。ちょこっと覗いたら、なんと会員数は100人を越えていた。(僕のもあるんだけどね)

「ルーベン、君がそんなに有名人だとは知らなかったよ」「ベリーダンス界で、だけね」。そう、どうやら、ベリーダンスには不可欠な楽器らしい。

彼にダルブカの手ほどきをして貰っていると、いつの間にか夜になっていた。

お母さんの作ってくれた家庭的なオランダ料理をご馳走になり、僕らは夜の街へ。


このベルヘン・オプ・ズーム、おそらく日本人でご存知の方はそう多くはないと思うけど、とっても素敵な街だった。










普通の民家は、どれも可愛らしいレンガの家が並び、通りは綺麗な石畳、そして実に何気なく、自然に歴史的建造物が建っていたりする。

 

街の広場。

古いレジデンスや教会に囲まれていて、カフェやレストランも沢山ある、とっても素敵な雰囲気。これだけ色々なものがあるのに、
全くツーリスティックではない。

僕は、またもや、この街がとてもとても気に入ってしまった。

 

 

 

この広場のオープンカフェでビールでも飲もうと言っていたのだけど、結構冷えてきたので、二人ともハーブティにした。 なんとも健康的な二人だ。

広場でお茶をしていると、ルーベンの友人から電話が入った。

「日本から友達が来ていると言ったら、ぜひ会いたいって言っているんだけど良い?」

「もちろん」

その友人とは、結構歳が離れているが、彼とはとても仲が良く、オーケストラの指揮者をしているという。 それはぜひ会いたい。

10数分後に来たのは、恰幅の良い50過ぎくらいの中年男性、お名前は「リネイ」さん。「リ」は巻き舌発音。


皆で、バーでビールを飲んだ後、お店がかなり賑やかになってきたので、少し離れた所にある、彼の事務所のような所に、場所を変える。

ルーベンとリネイさんは、かなり歳が離れているにも関わらず、お互い音楽家という事もあってか、とても仲の良い、まるで同級生のような感じだった。

「彼はいつも僕に的確なアドバイスをくれるんだ」とルーベン。

「いや、そうじゃないよ。結局は彼の判断さ。僕のはただの助言だ」とリネイさん。


話はいろいろな所に及び、僕が役者を辞めて日本を出てきた、というと、リネイさんが

「日本に戻ったらまた役者をやるのか?」と聞いてきた。

「まだ分からない。役者で生活するのは、大変だからね」

「我々はみんなそうさ・・・。 そうか、では君に以前ルーベンにしたのと同じアドバイスをしよう」

と、僕を隣の広い部屋に連れて行く。

部屋の隅に僕を立たせると、彼は僕の肩に手を回し、何も言わず歩き出した。彼の右手が僕の肩に添えられているので、僕も、彼と並んで歩く。

しばらく歩き、立ち止まると、右に90度曲がる。そしてまた少し歩き、また右に90度曲がる。少し歩いて、部屋の隅で止まる。当然、ここまで
一緒に歩いて来た僕も、止まる。

「さて、ここまで連れてきたのは誰だ?」

「・・・それはもちろん、」

「私ではないよ」

「?」

「君をここまで連れてきたのは、君自身だ」

何故だかわからないけど、この言葉が僕にとても強く響いた。

何も言えずにいる僕の様子を見て、彼は一言だけ付け加えた。

「It’s your decision.」


「decision」の意味は「決断」とか「決意」、「決心」だったと思う。

たぶん、ボーフムで、みのりとダニエルさんに会わなかったら、この言葉はこんなにも僕に響かなかったのではないだろうか。

それ以上、彼は何も言わず、僕の様子を見て、ただうなずくだけだった。

彼の言わんとした事と、僕が感じた事が、果たして同じだったかどうかは分からないけど、僕はとてもとても心を打たれた。


元にいたテーブルに戻り、再びウィスキーを飲みだした彼は「だから、いつでも自分自身で下した決断が、ベストチョイスなのさ」と、ぽつりと言った。

隣でルーベンは、深くうなずいている。


僕は、まだ、何も言えずにいた。


2010.11.13Play Like Talking~Day:57 Bergen op Zoom~
カテゴリー:17 : ベルヘン・オプ・ズーム

朝食に、ルーベンのお母さんが、わざわざお米を用意してくれた。

「日本人がお米を、どう食べるのか分からないけど、一応用意してみたわ」とお母さん。 お気持ちだけで、大変嬉しいです。

 ルーベンと、朝食を頂きながら、昨夜の話をお母さんにする。

 話題がリネイさんの事に及ぶと、お母さんが「彼は沢山飲んでた?」と聞くので「ええ、ウィスキーを沢山」と答えると、そう困ったわね、という顔をした。

 それを見たルーベンが、僕に「彼は少し飲みすぎなんだよ」と言う。

この時、彼は直接的な言い方をせずに 「problem drinker(問題のあるドリンカー)」 という言葉を使ったので、本当の所は分からないけど、どうやらリネイさんはアルコール中毒の気があるようだ。

 「僕らは彼が好きだから、いつも『リネイ、飲みすぎちゃ駄目だよ、健康に気をつけてね』と言うんだけど、それ以上は何も出来ないんだ。分かるでしょ?だって、」

「It’s his dicision.(それが彼の決断だから)」

「そう、その通り」

 昨夜の彼の言葉は、ひょっとしたら、自分自身に言い聞かせていたのかも知れない。「It’s my dicision.」

 彼だって、悩みながら歩いているんだろうな。

 

 さて、バカンスシーズンでも無い時にお邪魔しているので、もちろん僕のスケジュールは、全部彼にお任せだ。

 この日、彼はアムステルダムでコンサートがあるというので、僕は喜んでそれについていく。

 それも、博物館で行われる、タンゴのコンサートだと言う。博物館でタンゴ?何の博物館?と聞くと「僕も良く知らないけど、ミュージックマシーンの博物館だって」なんだかさっぱり分からないけど、面白そうだ。

 ベルヘン・オプ・ズームとアムステルダムのちょうど間、ロッテルダムという街で、今日一緒にコンサートをやるルーベンの友人、ウィムと合流して、3人でアムステルダムに向う。

 ルーベンと音楽大学で同期だったというウィムは、おそらくゆうに100kgは超えるであろう大きな身体の、そしてとても陽気な男性だった。

ふぅふぅ言いながら、手には真四角な荷物を持っている。これは「カホン」という打楽器。良く路上ミュージシャンが、長方形の箱のようなものに座り、その箱をパコパコ叩いて演奏している、あれです。

この2人に、タンゴシンガーを加えた3人で今日のコンサートをやると言う。

打楽器2つで、タンゴを唄うの?博物館で?依然、良く分からない。

 「ウィムとは長い付き合いで、良く一緒に演奏するんだ。だから今夜もクレイジーな事になると思うよ」とルーベン。

 彼らはとても仲が良くて、アムステルダムの会場に着くまでずーっと冗談を言い合い、ゲラゲラと笑っていた。

  

中でも、印象的だったのは、横断歩道の目の不自由な方用の信号機や、自動車の盗難防止アラーム等、どこかで鳴っている何かのリズムを拾うと、どちらかがそれを口づさみ、もう一方はそれに違うリズムで乗っかり、互いにどんどんアレンジして行って、最後は必ず爆笑で終わるという、なんとも音楽家らしい遊び。

 僕は、それを見て「おー凄いな。なんだかアーティストみたいだなー」なんて思ってたが、とんでも無い。彼らは正真正銘、本物の音楽家である事を、僕はこの後、思い知らされる。

  

 

コンサート会場は「ピアノラ ミュージアム」という、カフェと博物館が一緒になった可愛らしいお店だった。

 

「ピアノラ」とは、ピアノの自動演奏装置の事で、店内には、沢山のピアノラ ピアノが並んでいる。

一番大きな部屋では、お茶を飲みながら、実際にピアノの自動演奏が聴け、そこで定期的にコンサートをやるのだとか。なるほど、やっと意味が分かった。




コンサートの始まる、20時まではまだ相当時間があるので、みっちりリハーサルをやるのかな、と思いきや、彼らは歩きながらリズムで遊んでいた時のように、カホンとダルブカで、適当にリズムを叩き合っては、ゲラゲラと笑っている。

こんなんで、歌手はどうやってタンゴを唄うのかな?

と思っていると、ウィムがおもむろにピアノに向いだした。「えー、ウィム。そんなに太い指でピアノ弾けるの?」なんて思っていたら、これが!



 

携帯でご覧になっている方も、ぜひ一度パソコンで、この動画を観て頂きたい。まったく持って度肝を抜かれた。

なんと彼は、カホン奏者なんかではなく、8歳から作曲もしている、正真正銘のピアニストだったのだ。

これが、めちゃめちゃすごい!プロなんだから当たり前だけど、とっても上手い!

一応、文章でもご説明申し上げると、彼は、最初は静かに、とても綺麗なメロディをピアノで演奏する。すると、途中から段々テンポが速くなり、曲の勢いが増した頃に、ルーベンが「ちょっと僕も入っちゃおうかな」という感じで、ダルブカを叩き出す。

するとウィムは「お、来たな。ならこうしてやる」とピアノでダルブカに挑む。

「へへへ、負けないもんね」とルーベン。最後には、トルコの打楽器とピアノが見事に調和して終わる。本当に圧巻だった。


「!!! ちょっとウィム!君めちゃめちゃ凄いじゃない!!」「え?そう?ありがと」と大量の汗を拭うウィム。 ピアノでこんなに汗をかく人も珍しい。


この後も、お茶を飲みながら(ウィムはダイエットコーク)お喋りをし、時々ふらっとピアノに向ったり、ダルブカを叩いたりと、彼らは本当に遊んでるかのように、そして圧巻の技術で楽器を演奏する。


僕は、iPhoneのバッテリーが無くなるまで、彼らの演奏を撮り続けた。

収録出来た中で、僕が一番好きなのは、これ


 

最初はウィムがピアノ、ルーベンがダルブカを叩き、何度かフレーズのやりとりをしていると、ウィムがカホンに座り、二人の打楽器対決となる。

と、ここで、ルーベンが別のもう一台のピアノに向う。なんと、彼はピアノまで弾けちゃうのだ。パーカッショニストのピアノと、ピアニストの打楽器が続いた後は、ウィムがピアノに戻り、ピアノ対決。そして、最後はルーベンがカホンを叩き、アイコンタクトを取りつつ、息もぴったりに終了。


ちなみに途中で、唄っているのは、この日の主役、タンゴ歌手のホアンさん。最後で「ブラービッシモ!!」と叫んでいるのは、このピアノラミュージアムの女主人。

彼らは、喋っている途中、本当に突然、演奏を始めてしまうので、こんな映像しか撮れなかったが、こんな調子で、ずっと遊ぶように
何度も楽器を入れ替えながら、色んな演奏をしていた。

彼らが演奏を始めると、いつの間にかカフェの店員までもが、この部屋に集まって彼らの演奏を聴いていたりする。最高の2人だ。


夜も更けきった頃、満員のお客さんを迎え、始まったコンサートは、あくまでもホアンさんの唄がメインで、伴奏としてウィムのピアノがある。

最初の何曲かはこの2人で進められ、前半の最後の2曲だけルーベンがゲストとして加わる。


失礼ながら、ホアンさんの唄は、完全にウィムとルーベンのコンビに喰われてしまった感がある。お客さんの反応が明らかに違う。

休憩後も最初の何曲かは、ピアノと唄だけで、途中からまたルーベンが加わる。この時、ルーベンは盛大な拍手でお客さんから迎えられる。

僕は客席で、自分の事のように嬉しくなる。

そしてエキシビジョンのような感じで、ルーベンとウィムだけで、例の楽器を入れ替えつつの、音楽合戦をやる。

最初にウィムがピアノで小さいフレーズを叩くと、膝にダルブカを乗せたままのルーベンは、右手だけピアノに伸ばし、ピアノで応戦する。

それを何度か続けた後で、本格的にピアノ対ダルブカのコラボが始まる。そして、先ほどと同じように、ウィムがカホンに移り、打楽器対決。

そしてまた、ルーベンはピアノに行き、ピアノ対決が行われた後、最後にルーベンはダルブカに戻り、最初と同じ構図でクライマックス。

さすがに、ライブだけあって、これは動画に収録したリハーサルより、数段素晴らしかった。

お客さんも大盛り上がりし、小さな会場は、万雷の拍手に包まれた。

本当に彼らは、会話をするかのように、お喋りでふざけあっているかのように、楽器を弾いていた。


この日はとても遅くなったので、ベルヘン・オプ・ズームまで帰る電車はなく、ロッテルダムのウィムの家に二人で泊めてもらう。


家に入るなり、ウィムはいくつかの動画をルーベンに観せながら「これ観てよ、このドラムが凄いんだ」「ほら、ここのフレーズがさ・・・」と、お気に入りの演奏家達を僕に紹介してくれ、ルーベンとは、ひたすら音楽の話で盛り上がっている。


みのりの家でダニエルさんが、お気に入りのシンガーやダンサーの動画を観せてくれたのと、全く同じで、僕らも、仲間内で集まると、よくこんな事をする


どこの国の人達も、みんな同じなんだな、と少し嬉しくなる。

まるで楽器を演奏するかのような、彼らのお喋りは、夜遅くまで続いた。


2010.11.15シフラとビアンカ~Day:58 Bergen op Zoom~
カテゴリー:17 : ベルヘン・オプ・ズーム

陽気で大柄な、ラテンピアニスト、ウィムとお別れし、ルーベンと2人で、ロッテルダムの中心地へ向う。

  

中心地の一角、もとは銀行という古い建物の中に、彼の経営しているドラムスクールがあり、今日はそこでドラムのレッスンがある。

彼のドラムスクールは意外に広く、ありとあらゆる種類の太鼓が置いてあった。日本の和太鼓こそなかったけど、大量のダルブカを始め、エジプトや、インドの太鼓であふれていた。

  

またもや、せっかくなので、彼のプレイを。


 

 ウィムといい、ルーベンといい、どんなリズムセンスをしているんだろう。僕が始めてドラムを叩いた時は、普通に8ビートを叩けるようになるまでに4時間もかかったし、ちょっと調子に乗ってフィルインを入れて、クラッシュシンバルを叩くと、もう元のリズムに戻れない。

 でも彼らは、途中にどんな「遊び」のリズムを入れても、ちゃんと基本のリズムから外れないのがすごい。

まぁプロなんだから、当たり前なんだろうけど、リズム音痴の僕からすると、その仕組みが、どうにも分からない。

 ドラム歴8時間の僕も、少し叩かせて頂いた。相変わらず、バスドラムが下手過ぎでした。ルーベンはとても褒めてくれたけど。

  

とすると、今日の生徒さんがやって来た。眼が大きくてクリッとした可愛らしい女性、シフラさん。

 職業はなんとDJ。ルーベンとは長い付き合いのようで、彼のマネージメントの手伝いもしていて、一緒にコンサートをする事もあるとか。

 歳は僕と同じくらいか、それより下かな?と思いきやなんと38歳!(写真を撮るのを忘れたのでフェイスブックより拝借)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言われれば、そんな歳に見えなくは無いけど、なんというか、とても雰囲気が若く、すごくエネルギーに溢れて見える。

僕が彼女の年齢にやたら驚いていると、ルーベンが「彼女は、長い事DJをやっていて、色々な事を経験しているから、僕はいつも彼女に助けられてる。まるで、もう一人のお母さんみたいだよ。」という。

 「どれくらいドラムをやっているんですか?」と聞くと

 「今年の9月の誕生日から」 とシフラさん。さすがにちょっと驚いた。

「私は38歳で、結婚もしてないし、子供もいないけど、毎日とても充実してるわ。 いつも新しい事にチャレンジする時はワクワクするし、何でもやりたくなるの。」

彼女を包んでいる雰囲気の理由が少し分かった気がする。

とてもとてもエネルギッシュで、全身で生きている事を楽しんでるかのような人だった。

「彼女のすごい所は、何も恐れない所だよ」 とルーベン。

「そんなの当たり前よ。でも、タバコだけは止められないけどね。私からタバコを取り上げたら人を殺しかねないわ」

 なんというか、全く自分の前の壁を作らない方で、僕らはすぐにうち解けた。 きっとこの人は、誰とでもすぐに仲良くなっちゃうんだろうな。

  

シフラさんのレッスン後、僕らは3人で少しロッテルダムを歩いた。

ここはとても都会で、色々なお店と人で溢れている。その分、とてもゴチャゴチャしていて、これなら、僕はベルヘン・オプ・ズームの方がずっと好きだ。

「そうだ、典型的なオランダスナックをご馳走してあげる」 とルーベン。 屋台で買ってきてくれたのは、これ。


ポテトフライの上に、大量のマヨネーズがかかったモノ(あぁ名前忘れた!)。

このマヨネーズは、日本の奴とは少し違い、酸味があまりなく、ちょっとチーズのような濃厚な味だった。

通りをみると、面白いくらい皆これを食べてる。ただのポテトだけど、やたらに美味しかった。

けど、かなりハイカロリーだよね。





シフラさんとはここでお別れして、僕らは、仕事終わりのルーベンのお父さんと合流し、車でベルヘン・オプ・ズームまで帰る。

「日本じゃ、道路は左側を走るんだろ?」とお父さん。

「そうですよ」

「なんでだい?」

「・・・・さぁ?」

考えた事も無かった。なんででしょうね?左を歩かないと、刀の鞘がぶつかるから?じゃ、なんでヨーロッパは右なんでしょうね?


オランダは、本当に真っ平らな土地ばかりだ。

山もなければ、谷もない。

以前、何かで読んだのだけど、オランダの正式名称「The Kingdom of the Netherlands」の「Netherland」というのは「海の下の国」という意味らしく、国土の1/4は海面より下に位置しているそうだ。

そのせいか、自転車で走っている人がとても多い。これだけ平らなら、さそがし走りやすいだろうな。

ロッテルダムの中心地は、あまり好きじゃなかったけど、南の方にくると、綺麗な並木の道やレンガの建物が立ち並び、とても素敵な街並みが広がっていた。

平らな地面を、どこまでも広がるのどかな風景を眺めつつ、車は南へ向う。




この日の夜は、ルーベンが友達2人を呼んでくれ、4人でレストランで食事をする事になった。

これまた、古くからの友人でビアンカさんと、その彼氏のWineさん。

Wineさんの名前は、僕の耳では「ウィム」としか聞こえなく、ピアニストのウィムと混乱するので、Wineで。

ビアンカさんはフルート奏者で、Wineさんはベーシスト。

やっぱり音楽家の周りは、音楽家ばかりですね。

ビアンカさんは、今日は仕事帰りだというので、何の仕事をして来たんですか?と聞いたら、今日はミュージカルのオーケストラで演奏して来たという。

演目を聞くと、なんとライオンキング。これには、本当にびっくり。

僕は、東京でライオンキング出てたんですよ、と言ったら、ビアンカさんもびっくり。なんとこんな偶然があるとは。

「僕はこのシーンで、こういう事をやる役で・・・」「あーあれをやってたの!」と、ひとしきりライオンキング話で盛り上がる。

まさか、こんな所でこんな話をするなんて、思ってもみなかった。

ルーベンとWineさんは、まだライオンキングを観た事が無いというので「なんで観ないの?!」と2人で責める。初対面で、こんな構図になるなんてね。


もう少し時間があれば、ビアンカさんがオケをやっているライオンキングを観に行ったのに、とても残念だ。

まぁオランダの物価は高いから、チケット代もとても高いんだろうな。


相変わらず、量は多かったけど、とてもとても楽しい夕食だった。

まだまだバーで飲んで行く、2人とはここでお別れし、僕らは帰る事にする。


あんまり長い事お邪魔すると、ルーベンにもご家族にもご迷惑だろうから、僕は明日、お暇する事にした。

ルーベンのおかげで、この数日間、本当に沢山の人と知り合えた。一流の周りには一流の人が集まるのか、どの人も魅力的な人ばかりだった。

さすがに、かなり名残惜しい。


とても静かな石畳の通りを、二人で首をすくめながら、言葉少なめに家まで帰る。

彼がポツリと 「Time flies.(あっという間だね)」 と言った。