25 : シカゴ

2011.04.10お菓子の国の魔法~Day:100 Chicago~
カテゴリー:25 : シカゴ

今日で、2週間近くいたNYともお別れ。

ドイツのボーフムや、オランダでもそうだったけど、現地に住む人の家に泊めて頂くと、よりその街の事が良く分かる。

特に、それがショービジネスに挑戦している人達の家だと、「海外で挑戦する事」とは、どんな事かが良く分かる。

改めて、長い事泊めてくれた「猫さん」と「かえるさん」に感謝。

本当にありがとう。

 

NYはとても特殊で、とっても魅力的な街だった。

ショービジネスにおいて、観る人も、やる人も、創る人も、みんな満足出来る、という見本として、この街はあり続けて欲しい。

地下鉄とバスを乗り継いで、ラ・ガーディア空港へ。

ありがとう、NY。

本当に勉強になった。 でも、まだまだだ。 また来なくちゃね。

 

 

飛行機で1時間半、北へちょこっと、西へ数百キロ飛んで、シカゴへ。

「北へちょこっと」のハズなのに、着いたシカゴは、トンでもなく寒い。

そして、とても冷たい風に乗って、氷水のような雨が飛んで来る。

せめて、どっちかにして欲しい。

おそらく「あるあるネタ」だと思うけど、バックパック旅行をしていると、傘を差さなくなる。

大抵は、フードを被ってやり過ごし、あんまりヒドくなったら、どこかに雨宿りする。

そして雨宿り先で、また変なものを見つけて、楽しむ。 どうだろう?みんなこうじゃないのかな。

 

久しぶりに予約を取った、国際ユースホステルに向うが、雨のせいで通りの見通しが悪く、不安になってくる。

大きな図書館のすぐ隣のハズなんだけど、きっと日本の図書館とは外見が違うんだろうな。

信号待ちの時に、隣にいた綺麗なお姉さんに、

「すいません、ハロルド・ワシントン図書館はどこですか?」 と聞いたら、

「すぐそこよ」と言いながら、笑われた。

そんなに変な英語は使ってないと思うんだけど、貧乏バックパッカーが、図書館で暖を取ろうとしてるとでも思われたのかな。

やっとたどり着いたユースホステルは、HPで好評価だっただけに、とても大きくて綺麗だった。

クリスマスシーズンだからと言って、値上がりもしてない。

もちろん、ネズミも、ガス漏れもない。あぁ、良かった。

 

荷物を置き、ほっと一息ついて、iPhoneの地図で周辺をチェックする。

「寝る所」が確保出来たら、次は「食べる物」。

もはや、お決まりのルーティンだな。

宿を出て、信号をひとつ越えたところに、なんとも立派な劇場があった。

みると、クリスマスの定番バレエ(勝手にそう思ってるけど)、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」のポスターが張ってあった。

これはNYで、あの「ダニエル・シムキン」が25日からやる予定だった作品だ。

NYで観れなかったので、観れるものならぜひ観たい。

が、ポスターはおろか、劇場の入り口周辺にも、上演日時の詳細が書いてない。

劇場の入り口は閉まっていて、まったく人気が無い。

 

 でも、チケットボックスは、かろうじて開いているようなので、窓口の呼び鈴を押してみると、奥から、女の子のような綺麗な顔をした青年が出てきた。

「今夜、公演はあるんでしょうか?」

「はい、19時よりございます。」

「チケットはまだありますか?」

「各席、少なくなっておりますが、どの席をご希望ですか?」

「一番安いのを。」

「でしたら、30ドルの席が一枚ございます。」

綺麗なのは、顔だけでなく、声も、態度も、実にご立派。

まったく世の中不公平だな、なんて思いながらも、ありがたく一枚購入。

後で調べたところによると、ここは「AUDITORIUM THEATRE」というシカゴを代表する劇場で、あのフランク・ロイド・ライトが19歳の時に、初めて製図を手がけた劇場だった。

彼いわく、「音楽とオペラの為の最高の空間」、らしい。

そんな事とはつゆ知らず、冷たい横殴りの雨の中をうつむきながら歩いていた僕は、まったく外観を見てなかった。

なんと、勿体ないことを。

しかしそんなすごい劇場が、宿の近くにたまたまあって(調べて行けよ)、運よく、安いチケットが手に入るとは。

この旅、こと観劇チケットに関しては、馬鹿ツキなんじゃないだろうか?

 

宿に戻って、「これが最後かな?」と思いつつ、ワイシャツにネクタイ、ジャケットを着て、食堂で熱いコーヒーを飲んで、劇場に戻る。

僕は恥ずかしながら、この「ジェフリーバレエ」という団体を知らなかったのだけど、衣装もセットも最高に豪華で、ダンサーのレベルも高く、とても素晴らしい公演だった。

会場にはお子様づれも多く、この最高にメルヘンチックな作品を、楽しんでいたように見えた。

とっても華やかで、難しいストーリーも無いので、クリスマスに家族連れで観に来るには、最高の作品だと思う。

ただ、クララのお兄さん(フリッツだっけ?)役の方の、頭の薄さだけはどうしても気になった。

遠くからハッキリ分かるくらい、つむじ部分が薄い子供っていうのは、いかがなもんか。

このジェフリーバレエ、やたらにお金がかかっているな、と思ったら、プレイビル6ページにわたって、スポンサーの名前が載っている。

50万ドル以上の欄に1つ、10~50万ドルの欄には、なんと15もの企業やファンドの名前がある。

やっぱり、ここまで豪華な舞台をやるには、それだけのお金がかかるんだなぁ。

「そういうもんだ」と割り切るにのは簡単だけど、なんとか他の方法が無いものか。

このまま、あと何年も、バレエやオペラは、こういうシステムで運営するしかないのかな。

 

「最高の空間」で、夢のような舞台を観て、外に出ると、横殴りの雨は、細かい雪に変わっていた。

余韻で頭がぼーっとしたまま、宿に戻る。

 

3Fの食堂に行き、無料のコーヒーを飲みながら、放心のような考え事をする。

すると突然、後ろから初老の男性が、声をかけてきて、

「ほら、見てごらん」と、窓の外を指差した。

見ると、窓の外の暗闇の中を、ピカピカに光った電車が、宙を飛んでいた。

それはまるで、おもちゃ箱から出てきた電車が、夜中にこっそり、空を飛んでいるのかのような光景で、僕は本当にびっくりした。

よく見ると、ちょうど建物に沿うように高架の線路があり、その上をクリスマス用のイルミネーションをつけた電車が、走っていただけだった。

それでも、そこに線路がある事も、クリスマス用の電車が走っている事も、全く知らなかった僕は、一瞬、本当に、ファンタジーな世界に迷い込んだような気がしてしまった。

30過ぎたオッさんが何言ってるんだ、という感じだけど、僕の人生の中で一番、メルヘンチックな瞬間だった。

 

「クリスマス・トレインだ、やっと見れたよ。今夜はラッキーだな。」と、男性。

この時の気持ちは、ラッキーとか、運が良いとかでは表せない、とても不思議な気分だった。

 

窓の外は暗く、さっきまで電車が走っていた線路は、まったく見えなくなっていた。

僕は完全に放心しながら、窓の外の小さい雪を、ぼーっと見ていた。


2011.04.11フローズンパープルレイン~Day:101 Chicago~
カテゴリー:25 : シカゴ

おそらく、小劇場で活動してた役者のほとんどが、そうだろうと思うけど、僕もいろんなアルバイトをした。

しかも公演が迫ると、稽古やら準備やらに時間を取られてしまうので、仕方なく不定期で特殊なバイトをする事も多い。

なので、今は無き「グッドウィル」で、「日雇い現金とっ払い」、なんてのも結構やった。

 

ある日、「お弁当の仕分けのお仕事です」と言われ、行ってみると真夏にも関わらず、どデカイ「防寒防水コート」を着せられた。

巨大な金属のドアを二枚くぐり、行き着いた先は、大手スーパー「ダイエー」の、巨大な「冷凍倉庫」だった。

確かに食品の仕分け作業だったけど、「ー25度の中で」とは聞いてない。

-25度の世界は、鼻水が凍ってツララになる。まつ毛が凍って、視界の上の方が常に白い。汗をかくと凍るので、あんまりセカセカ動かない。と言っても動けない。

今となっては、良い経験だけど、もう一度やれと言われたら、ちょっと嫌だ。

 

また、前書きが長くなってしまった。

この日、外に出て、思った事。

「12月のシカゴは、この『-25度の冷凍倉庫』より寒い。」

気温はー14度ほどで、雪もそれほど降ってないのだけど、ひっきりなしに横殴りの風が吹いている。

プラハで買ったコートは、とっても暖かいのだけど、強風に対しては弱い。

というか、この風の中、外を歩く人は、極力肌の露出を抑えている。

みんな、ほとんど出ているのは眼だけ。

こりゃ、コートがどうとか、そういう問題じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、近所のマーケットで、水やらチョコレートやらを買うだけにして、急いで宿に戻る。

正直、こんな中出歩きたくないけど、せっかく来たんだから、せめてブルースだけは聴きに行こう。

さすが、評価の高い国際ユースホステル。

ちゃんとツーリストインフォメーションのコーナーがあって、安全な(ここ大事)お店をいくつか紹介している。

係りのお姉さんに聞くと、とても丁寧に行き方を教えてくれて、地図まで書いてくれた。

おし、ブルースはおーけ。

 

なんだかんだで時刻は昼過ぎ。さて、夜までの時間をどうするか、だ。
 
シカゴと言えば・・・シカゴ・カブス、シカゴ・ブルズ、シカゴ管弦楽団ってのもあったっけ? あとは、アル・カポネ、アンタッチャブル、シカゴギャング。

観光名所、ひとつも無ぇやな。

インフォメーションコーナーにある観光名所は、どれも吹雪の日に行くところじゃなさそうだ。

と、ボードに「クリスマスキャンドルマーケット」の文字を見つけた。

これなら、なんとなく良さそうだ。とりあえず、ここに向おうかな。

部屋でありったけの服を着込んで、マフラーとニット帽で、露出を出来るだけ減らす。

なんとか、表を歩けるようになったけど、さすがにいつもみたいに、長時間は歩けない。

早々に電車に乗る。

 

シカゴの電車は、街の中心部は地下にもぐり、それ以外の場所では、高架の線路を走る。

路線名も「ブルーライン」「レッドライン」と分かりやすい。

東京の地下鉄も色分けされてるけど、増えすぎてワケ分からないものね。

「都営浅草線」と「東京メトロ銀座線」を、色で見分けられる人が、果たして何人いるやら。

寒いせいなのか、土地柄なのか、車内はとても静かで、みんなあまりお喋りをしてない。

NYの地下鉄で沢山見かけた、パフォーマーも全くいない。

 

僕も座席でじっと寒さに耐えていると、いつの間にか車内は込み合ってきていた。

ふと、まわりの人に眼をやると、全員似たような服を着ている。

一瞬、どこかのスポーツチームの団体さんでも乗って来たのかな、と思ったら、ちょっと様子が変だ。

なんだこりゃ?と思ってよく見ると、ほとんどがネイビーとオレンジを基調としたブルゾンや、コートを着ていて、どれにも「C」のマークが入っている。

このマークはどこかで見た事がある。・・・そうだ、NFLの「シカゴ・ベアーズ」だ。

 

別に僕は、アメフトに詳しいわけじゃないけど、何年か前にたまたま観たスーパーボウルが、滅茶苦茶面白くて、とても印象に残っていた。

それが、確かこの「シカゴ・ベアーズ 対 なんとか・コルツ」だった気がする。

ハーフタイムショーでは、プリンスが雨の中を、紫のギターを弾きながら、「パープルレイン」を歌っていたっけ。

という事は、この人達はベアーズのサポーターで、これから応援に行くんだな。

よし、これは皆と一緒の駅で降りて、NFL観戦をしてしまえ!

と思ったけど、どうも様子がおかしい。

沢山の人が乗っているのに、ほとんど誰も口を利かないのは寒さのせいだけでなく、みんな明らかに「ちーん」となっている。

これから楽しみに観戦に行くというよりは、お通夜の雰囲気に近い。

駅に止まるたび、少しずつ乗客が降りていくので、どうやら観戦後の帰宅するところだったらしい。

残念。

「試合はどうだったんですか?」と近くの人に聞こうかと思ったけど、あまりの雰囲気に圧され、やめた。

どうみても、勝った雰囲気じゃない。

負けたサポーターの雰囲気は、世界共通みたいだ。

*後で調べてみたら、この日のベアーズは、ペイトリオッツに「7対36」というスコアで負けていた。お通夜になるわけだ。

 

ベアーズファンを刺激しないよう、そっと電車を降り(ウソです)、クリスマスキャンドルマーケットへ向う。

と、すでに日は暮れていて、雪が強くなって来ていた。

キャンドルマーケットは、広場に大きなクリスマスツリーがあり、その周りのテントで、様々なクリスマスのグッズを売っている。

「サンタのお家」なるものまであるし、クリスマスのお菓子も沢山売っていて、いかにもクリスマスの楽しい雰囲気で満ちている。

が、いかんせん、寒すぎる!

テントの前で「へー、これ可愛いなぁ、いくらだろう?買って行こうかな」なんてやってたら、凍えてしまう。

歩くのをやめたらそのまま、氷の柱になっちゃうんじゃないか、ってぐらい寒い。

たまらず、テントの一角の屋台コーナーで、ロシアのなんとか、っていう熱くて、辛いスープを飲む。

熱いのが嬉しい。味は、ほとんど覚えてない。

・・・キャンドルマーケットの楽しみ方を、間違えているな。

とりあえず、雰囲気は楽しんだから、ブルースのお店に行ってしまおう。

 

またもや、電車に乗り、宿で教えて貰ったお店に向う。

入ると、入り口で「カール・ゴッチ」みたいなオジさんに「ヘイ、IDを見せな」と、言われる。

どうみても、未成年には見えないだろうに、なかなか厳しいんだな。

適当な席に座って、飲み物を頼むだけで、ブルース生演奏聞き放題、入場料は無し。

僕がいた2時間の間に、3組ぐらいのミュージシャンが演奏してくれたけど、たぶん彼らのギャラはチップ以外にあるんだろうか?

 

吹雪の中、頑張って来て、ビールだけで2時間粘ったけど、正直演奏はそれほど良くなかった。

1組目はほとんど歌わないで、エレキギターを掻き鳴らしてばかりだし、キーボードはソロになると、やたらに高音の鍵盤を叩くだけ。

2組目の黒人のオバさんは、歌はさすがにパワフルだったけど、途中から下ネタパフォーマンスを連発しだして、ちょっとウンザリ。

3組目は、さっきのオバさんに加えて、もうひとりオジさんボーカルが加わった構成になったけど、あんまりパっとしなかった。

またもや、知った風に偉そうな事書いているけど、ミュージシャンの平均年齢がやたらに高くて、ちょっとイマイチだった。

唯一、最後の組で、キーボードを弾いていた東洋人の女性は若くて、とっても上手かった。

せっかく見つけた若手アーティストが東洋人なら、これはリレーをお願いせねば!

と、ここで一気にテンションが上がったが、残念ながら彼女は、休憩になるとすぐ裏に入ってしまい、それっきり出てこなかった。

さっきの、カール・ゴッチさんに「キーボード弾いてた彼女は?」と聞いたら、「さぁ?帰ったんじゃないか」と言われてしまった。

 

ものすごく残念だったけど、こんなに寒い異国の地で、頑張っている若手アーティストがいると分かっただけでも、いいかな。

休憩の後も、演奏はまだまだ続くようだったけど、あんまり遅くなるのも嫌なので、帰ることにしよう。

 

と、表に出た数歩歩いた瞬間、「いや、無理無理!」と日本語で叫びつつ、すぐにお店に戻った。

雪はやんでいたけど、寒さは一段と増している。

それとも、ビールで酔っ払ったので、なおさら冷えるのか。

とはいえ、このお店で夜を明かすわけにも行かないし、バーカウンターでコート売ってるわけでもない。

覚悟を決めて表に出る。

 

これまでの人生の中で感じた、一番の寒さだった。

このまま歩いていると、本当にどうにかなってしまうんじゃないかと思って、駅までの道を全力で走った。

 

今日は、朝からずっと凍えている。

なんとか着いた駅で、ほとんどサビしか知らない「パープルレイン」を歌いながら、電車を待つ。

あのダイエーの、冷蔵倉庫が懐かしい。


2011.04.12こんな日~Day:102 Chicago~
カテゴリー:25 : シカゴ

本来の予定だと、シカゴは4泊の予定だった。

ま、世界一周航空券の発券時に、日時を指定しなくてはいけなかったので、すごく適当に決めたのだけど、変更しておいて良かった。

12月のシカゴに4泊だなんて、僕の装備では無謀すぎる。

それに5日間使うほど、特に観るものも無い。NYに長くいて大正解。

 

朝起きると、空は薄い雲がかかっている。

雪は夕べからずっと降っていないようだった。

ユースホステルにしては大きく、とても清潔な部屋で、荷造りをしていると、宿の女性が書類を手に部屋にやってきた。

 

「チェックアウト?」

「ええ」

「朝から飛行機の欠航が多いみたいだから、調べて行った方が良いわよ」

「欠航?」

「ええ、宿泊延長する人がとても多いから、連泊する時は早めに言ってね」

 

昨日、おとといの吹雪ならいざ知らず、今にも晴れそうな日に欠航?

ま、飛行機なんていろんな状況で、飛べなくなるんだから、言われた通り調べて行こうかな。

荷造りをいったんやめ、ユナイテッドエアラインズのサイトを見るも、いまいち運行状態が分からない。

んーなんじゃこりゃ、とiPhoneをいじっていると、どこからか黒人の男性がやって来た。

 

「Hi、出発かい?」

「そうだよ」

「どこへ?」

「ニューオーリンズ」

「Wow、そりゃ良いや。ここは寒すぎるからな。着いたらすぐビーチだな」

「ビーチ?」

「そうだよ、ルイジアナに行って泳がないつもりか?」

 

嘘だろ?

昨日は、ダイエーの冷凍庫より寒い思いしたんだぞ?

確かにシカゴからニューオーリンズだと、北の端から南の端へ、って感じだけど、そんなに気温が違うのかな?

そんな話を聞いてしまった途端、頭の中には、青い海と、白い砂浜が浮かんでしまった。

もういいや、とりあえず空港に行っちゃえ。

 

素朴なデザインの車体の、「シカゴ・L」電車に乗って、空港へ向う。

高架から、午前中の穏やかな街並みを眺めていると、すーっと晴れて来た。

今度は、もっと暖かい時に来たいな。

 

空港に着いて、発着案内を見ると、いくつか「Delay」となってるけど、ほとんどちゃんと飛んでいるみたいだ。

あー良かったと、一応自分の乗るUA7611便を確認すると、ポツンとひとつだけ、「Cancel」の文字が浮かんでる。

そうかーキャンセルかー・・・なんで?

NY行きもロサンジェルス行きも飛んでるのに、なぜニューオーリンズ行きだけキャンセル?

しかも遅延ですらなく、出発2時間も前にキャンセル?

 

「あはは、これって『Can’t sell』の間違いじゃないよね?」と、乏しい英語力を振り絞ったジョークを言っても、誰も相手にしてくれない。

こういう時、一人旅はちょっと寂しい。

そして、海外経験の乏しい僕は、欠航になってしまった時にどうしたら良いか分からない。

とりあえずチェックインカウンターに行ってみよう。

 

「えーやだな、シカゴにもう一泊?『世界一周航空券で、他の便に変えるには手続きが』、とかなるのかなー」と、ドキドキしながらカウンターにチケットを出す。

中国系の、笑顔の爽やかな青年が、

「あー、この便はキャンセルだね」、とサラっと言う。

「そう、どうしたら良いのかな?」

「大丈夫。この後に飛ぶ別の便に空きがあるから、そちらに変更するね」

なんだ、なんて事ないじゃないか。簡単なもんだ。

シカゴで、もう一泊かと思っちゃったよ。

「OK、これがチケットね。シカゴ発ニューオーリンズ行き。20:00発でゲートは・・・」

まてーい!

にじゅうじ?!

「うぉうぉ、ちょっと待って。20時?」

「そう」

「今から、8時間以上あるよ?!」

「でも、他に今日飛ぶ便はないんだ。 でね、ゲートは・・・」

「ちょ、ちょ、待って。20時かー」

と、まぁ、考えてみた所で、しょうがない。

今からまたユースホステルに戻って、もう一泊して、明日も欠航だったら嫌んなっちゃうしな。

仕方なく、荷物を預け、長蛇の保安検査の列に、ゆったりと並ぶ。

 

こんなに保安検査で、「さー、たっぷり調べてくれ!」という気分になったのは、初めてだ。

でも、こういう時に限って、サラっと通される。

ついでに、肺のレントゲンとか撮ってくれないかな?

たくさんの係員に、ゆっくり検査して頂いても、まだ出発までは8時間もあった。

まぁ、ブログを書けば、時間はいくらでも潰れるから良いんだけど。

 

おっと、いけない。今夜予約した宿に、遅れる旨を連絡しないと。

外国の公衆電話ってなんか苦手なんだけど、仕方ない。

電話に出た青年に、飛行機が遅れる旨を伝えると、やたら早口な長文が返ってくる。

どうやら、「空港からの送迎はいらないのか?」と聞かれているみたいで、僕が「大丈夫、いらない」と言っても、まだ早口長文が返って来る。

なんどか聞き返すも、どんどん早くなる。

手持ちの25セントコインが、どんどん減っていくので、あんまりのんびりしてられない。

遅れる事、到着時刻、送迎はいらない、という3つが伝わってる事を確認したとたんに、電話が切れた。

ま、大丈夫だろう。

とりあえず、ほっと一段落かな。

 

マクドナルドで「スペアリブサンド」(みたいな奴。やたらに美味い)を食べて、5つだけあったパソコンデスクみたいな所で、ひたすらブログを書く。

あんまり長時間、占領しても悪いかな、と2日分ほど書いたところで、あたりをウロつく。

すると、空港内で、バンドの生演奏をしていた。

さすがは、シカゴ。 デルタ・ブルースを進化させた街。

暇な僕は、彼らが休憩に入るまで、ずっと聴いていた。

 

変更した20時発の便は、15分ほど遅れて離陸し、機長はコックピットから、やたらすまなそうに謝ってた。

ここまできたら、10分遅れようが、15分遅れようが、全然構わない。 おおらかな僕。

 

2時間15分ほどかけて、ニューオーリンズ空港到着。

時間が遅いせいか、やたらにがらーんとしていて、物寂しい。

預けた荷物を受け取って、持ち易いように整理していると、到着ロビーはほとんど僕独りになってしまった。

どこの空港にもいる、怪しい人、すらいない。

はっきり言ってしまうと、田舎の無人駅のような空気が漂っている。

・・・なんだか嫌な予感がする。

宿から届いたメールを見ると、車での行き方しか書いておらず、僕が電車での行き方だと思っていた欄は、長距離鉄道でニューオーリンズ駅に着いてからのものだった。

ありゃ、困ったなと、ターミナルを見渡すと、「Subway」はおろか、「Train」の文字も無い。

そう、このニューオーリンズ空港は、いっさいの鉄道が通ってない。車でのアクセスのみ。

・・・電話で早口に言われてたのは、この事だったんだな、きっと。

こんなに有名な都市が、こんなに田舎だとは、全然知らなかった。

そのくせ、空港内の案内板には日本語表記がある。もう、なんだか良く分からない。

仕方なしにタクシーで、宿に向う。

結局、宿の送迎より10ドルほど高くついてしまった。

んー、ちゃんと調べれば良かったな。

 

20分ほど走って着いたところは、どうみても普通の住宅街のど真ん中で、ろくに街灯も無い。

NYでもあった「普通の民家改装タイプ」らしい。

まぁ、安い所を探すと、大抵こうなのかな。

随分と遅くなってしまった僕を、太った女の子が暖かく迎えてくれた。

お世辞にも綺麗な部屋ではないけど、キッチンもあるし、居心地は良さそうだ。

 

あー、長い一日だったなぁ、と荷物を降ろして、ふと、

「ねぇ、食事が出来る所は近くにある?」と聞いてみると、

「歩いていける所にあるお店は、もうみんな閉まってるわ」と、言われた。

 

ん、こんな日もあるさ。

無事に着いたことを、祝いながら眠ろう。